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汚川の宝石

写真と本文は関係のないことが多いです

0055.jpg
自作ルアーです


巷で何かと評判の悪いバスフィッシングをしています。

車で1時間程の所の里川なんですが、こんな田舎でも生活排水が流れ込んでかなり汚れています。

東京に住んでいた頃、仕事先の近所の歯医者のおじいさんの話では、

昔はこの川も鮎が泳ぎ子供達が水泳をしていたそうですが

現在コイとフナ、ナマズにブラックバスしかいませんし、泳げば病気になりそうです。

話しはそれるのですが、この下町の歯医者さんはおそらく70歳をとうに越えていて、

病院の建物も同じくらいの年数と思われ、診察室はありとあらゆる物が積み上げられ、

狭く、汚く、最初入ったときはこのまま見なかったことにして帰ろうかと思ったくらいでした。

老医者は奥さんに先立たれ、この小さな病院に一人で住んでいました。

通っている間に他の患者にあったことは一回も無く、暇をもてあましているであろう先生は

私が釣り好きだと知ると、治療はそっちのけでまず30分は自分の若い頃の釣りの話しをします。

私は仕事をさぼって通院しているものですから時間が気になって仕方有りません。

カルテらしき紙の束の下をごそごそ探って釣りの仕掛けを取り出し、

「ココがこうゆう風にユレて魚を誘い、コンナになるから食いつくんだよ」

なぞと話し「そうだ、そうだ見せたいものがあったんだ」

ナニやら医療器具の入った棚から巨大で古い鯉の魚拓を引っ張り出し

「どうだすごいだろう」と子供の様にニコニコして自慢話をするのでした。

私は部長の顔が脳裏に浮かびながらも、結構楽しいひと時を過ごした後、

戦争と関東大震災をどうやって免れたんだろうと思われる時間が止まったような建物を後にしました。

でも先生の名誉のためにここで書きますが、腕はものすごく良いんです。

もう20年くらい経ちますが未だに歯の詰め物は健在です。

しかも初診料こそ、それなりの値段がしましたが毎回の治療費は40円か60円でした。

昭和初期の話ではなく1980年後半ごろの話ですよ。

0054.jpg
自作ルアークランクベイト


まるで話はそれましたがバス釣りの話です。

ポイントを求めて土手をゆっくり歩いていくと、

向こうの方にバズーカ砲みたいなキャノンの白いレンズが見えてきました。

端っこにはカメラと中年のおじさんがくっついています。

私は邪魔にならないように後ろからこっそり近づき小さく声をかけました

「何を撮っているんですか」

「カワセミです」

この川は幅が広く、中州が約1キロに渡って続いていて川が二分されています。

私たちがいる土手は人は通れるのですが中州は誰も入れません。

ここのわずかながらの自然にカワセミの夫婦が巣を作っているのです。

私もこの川に通いつめているのでカワセミがいるのを知っていましたが、

どこに巣が有るのかまでは知りませんでした。

0053.jpg
リュウノスケ 買われてきたその日


中州の土の壁に小さな穴が空いていて、

その前に木の枝が数本伸びてカワセミが止まっているのが見えます。

「アレがオスでメスを穴から誘い出しているんだよ。魚をくわえているのが分かるでしょう。

人間と一緒で贈り物をしてメスの気を引いて×××をしようとしているんだ」

美しい鳥に似合わないヒジョウに下品な発言に私は多少うろたえながらも話を聞くと、

仕事を定年退職後にこうやって毎日写真を撮っているんだそうです。

「メスがなかなか出てこないんだよ、焦らしているんだろうね、これも人間と同じだ・・・・

あっ!出てきた」

0052.jpg
りんご 買われてきたその日


私たちはお互いの顔をまるで見てなく、カワセミだけを見ていたのですぐに分かりました。

さっと穴からきらきら光るブルーの塊が飛び出したかと思うと、

オスのくわえていた魚を目にも留まらぬ速さでひったくり、巣の中に帰って行きます。

あまり早すぎてシャッターを押す暇が無かったみたいで悔しそうに、

「人間もこういうことはあるよな、メスはずるいよな」

どうもこの一見インテリっぽい中年のオヤジは、

鳥と人間を一緒の目線で見ているようで必ずといっていいほど話の中に男と女を混ぜます。

川の水は汚く、周りは入れ替わり立ち代りバスフィッシングをする人でかなり騒々しいのですが、カワ

セミとカメラマンだけは己が仕事を黙々とこなしています。

オスのカワセミは餌を探しに飛び立って行きました。

0057.jpg
合成写真


「何回くらい運べばメスは気を許すんでしょうね」

「分からんねメスの気分しだいだよ。男はつらいね」

「多少は悪いと思って早々と許すメスもいるんでしょうね」

「ウン、ウン、いるいるそんな女性」

たわいもない話をしているうちに魚をくわえたオスがまたもや枝に止まりました。

「あっメスが出てきた。今度こそ乗っかれ」

オヤジがファインダーを覗きながらレリーズを持つ手に力が入り、

続けざまにモータードライブのシャッター音が鳴ります。

カワセミの子孫繁栄の儀式はあっという間に終わりました。

インテリオヤジは今度は上手く撮れたみたいで始めて私の顔を見つめ

「一週間通ってやっと撮れたよ、オスもあれだけ苦労してたった一瞬だもんな、俺と同じだ」

このインテリ、退職、小太りオヤジの過去にいったい何があったのでしょうか?

よほど女性に苦労したのでしょうか?

今は穏やかな顔で人生を楽しんでいるように見えますが。

ふと彼には私はどういった風に見えるんだろう?と気になりました。

「平日の真昼間から訳の分からぬ釣りをして、暇そうに話しかけてくる

ちょっと間の抜けたような中年オヤジ」

くらいに見えているのかな?まあどうでもいい話ですが。

さて、馬鹿でかい目立つレンズの前に座るオヤジと、釣竿を担いだオヤジが

一緒に並んで座り、カワセミの生殖行動の話をしているのも気持ちが悪いので、

私は立ち上がりました。(インテリ、中年、退職、小太り、下ネタ好きオヤジ)と別れを告げ

(間の抜けた、中年、まだしばらくは現役、下ネタ好きオヤジ)は

すっかり釣る気が失せ

「カワセミは自宅では絶対飼ってはいけないよな、女房と娘に怒られるしな」

と残念そうに独り言いながら家路についたのでした。

0056.jpg
合成写真




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