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渓谷の猿

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(写真と文は関係ありません)

その夜の宿は車中でした。

夕方に自宅を出発して高速道路を何時間か走り、曲がりくねった山道を2時間ほど登ります。

途中民家が何件かポツン、ポツンと有りますが、

1時間もするとあたりは真っ暗で、車一台がやっと通れるぐらいの道幅になります。

自分で運転しているにもかかわらず車酔いで気持ちが悪くなり、

何か出そうな夜の山に「ケンでも連れて来れば良かったな」と心細くなりました。

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(写真と文は関係ありません)


夜中頃に渓流沿いの道路脇に車を止め、明け方まで仮眠します。

夜明けと共にヤマメとかイワナとかその他、釣れるものは何で釣ろうと、

こだわりも何もなくやって来たのです。

日が昇る少し前に、のそのそ起き出し、コールマンの小型ストーブでお湯を沸かします。

最近はガスのバーナーを使っている人が多いですが、私はこのホワイトガソリン仕様が好きです。

もう30年近くも直し直し使っているので、寝ぼけた頭でも体が勝手に動いてくれて、

気がつくとコーヒーを飲んでいるといった具合です。

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(写真と文は関係ありません)


獣と釣人が通って付けた細い道を苦労しながら川まで 降ります。

こっそり魚に気づかれない様に歩き、第一投目を投げ込みました。

私は魚が食いつく瞬間を見るのが好きなので、ほとんどの場合水に浮くタイプのフライを使います。

フライフィッシングの腕は大したものですので、木に引っ掛けたり自分に刺したりと、

毛ばりがいくらあっても足りません。

そこで自分でフライを作る事にしました。材料も自宅で飼っている動物の毛を使います。

犬のケンの毛、ウサギの毛、鶏の羽、散歩中に拾った名もわからぬ鳥の羽、

大体抜け落ちた物を使うのですが、たまに鶏を抱いて、

「よし、よし、お前はいい子だねえ」

と猫なで声でお世辞を言いながら、首の周りの羽を何枚か拝借し、横目で睨まれます。

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(写真と文は関係ありません)


「ヒヨ、行きます!」

と小さく叫びながら流れの淵に飛ばしたフライが珍しくドンピシャの位置に、

しかもふわりと着水した瞬間、15~16センチ位のヤマメがヒットしました。

ロッドが細いのでこれ位の魚体でも結構楽しめるんです。

「う~ん、ヒヨの羽は良いなあ。それに比べてケンは年のせいか毛に艶がなく、すぐに沈んでしまう。

やはり若い娘には勝てん」

とオヤジ丸出しの独り言を言いながら川を釣り上って行きます。

ピヨ、シロ、サマランチ、ガア、など、いろいろなフライを叫びながら試し、

そこそこ釣った後で、夏とは言え冷たい水に何時間も浸かっていたので、トイレに行きたくなりました。

川岸に上がり用を足していた時、何かの気配で横を見ると、

一匹の犬が木の根元にうずくまっているのが見えました。

何か様子が変ですが、いつもの様に話かけます。

「よし、よし、お前そんな所で何してんの?」

その他、あまり人には聞かせられない言葉で語りかけますが、一向に反応が有りません。

目は、開いたままで瞬きもせず、ピクリとも動かず、ちゃんと伏せの姿勢でこちらを見ていました。

かすかに腹が呼吸で上下しているので、生きている事は分かります。

しばらく私は××××を丸出しにしたままでその雑種犬を観察しました。

そして以前我が家に迷い込んできた一匹の犬を思い出したのです。

そいつも今と同じ様子で無表情、しかし良く見ると目が落ち窪んで・・・何というか硬い表情で・・・

ひょっとしたらこれは?・・・ある程度長く生きていると、

どうしても人とか動物とかの死に触れる回数が多くなってきます。

後で考えると死ぬ前の顔というか雰囲気は、なんとなく普通と違う事があるんです。

自宅の庭の隅でこちらを見ていた犬ははっきりと死相が現れていました。

私はどうする事も出来ず、いえ何もしない方がいいと思い、そのままにしておきました。

動物は野生に近い程ひっそりと一人で死んで行きます。

犬は野生では有りませんが、この犬は人の手を拒絶していように見えたんです。

あくる日、自分で死に場所と決めた場所に、動かなくなったその犬を埋めてやりました。

0039.jpg
(自作のルアーです)

                                               続く


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