スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

南海のブルーマーリン 前編

remon01.jpg
(レモン)


その日我々は日本の空港で手荷物検査を受けておりました。

我々と言うのは前回キャンプで一緒だったお調子者のBです。

二人で4メートル超のまかじきを釣り上げてやろうと分不相応の考えを持ち、

羽田空港のロビーで順番を待っていたのでした。

他の二人AとCは一応名の知れた大手のサラリーマンであり、

そうそうみんなそろって集まれる機会はないのです。

ちなみに信じられませんが彼らは会社ではそこそこ偉いのであります

(キャンプでの様子を会社の部下には絶対見せられません)

私とBは良く言えば自営業者で有り、悪く言えば職業不詳ですので、

地位と名誉と金は有りませんが時間だけは自由になります。

検査は手荷物を赤外線で走査して中身をモニターに映し出すのですが、

その時係りの女性が上司と思しき男性に呼ばれて席を立ち居なくなってしまいました。

私はチャンスと思い体をずらせてモニターを覗き込みました。

と言うのもバックの中身に少々不安があったのです。

中には振り出し式の小さな金属製のルアーロッドと数々のルアーが無造作に放り込んであり、

ひょっとしたら没収されるかもしれないと思っていました。

案の定モニターには得体の知れない数々の白い文様が表れ、明らかに不審物であります。

係員が戻ってきてモニターを見つめました。考えております。

あっ、うつむきました。顔をしかめています。間違いなく疑っております。マズイ!・・・・

やがて彼女は決心した模様であります・・・・・・なんと私は無事通過できました。

当時は現在と違ってテロなどの心配はなく、空港のチェックはそれほど厳しくなかったのです。

しかもその時ちょうど空港職員の組合がスト中だったものですから、

現場はかなり混乱していた様でした。
remon02.jpg
(本文とは関係有りません)


南国の太陽がこれでもかと降り注ぐ港で

私達二人は振り出し式のちゃちなルアーロッドを振り回していました。

チャーターしていたクルーザーが用意できるまでの少しの間も待ちきれずにルアーを放り込みます。

赤やら青やら港の中と思えないほどのきれいな魚の群れが泳ぎ回り、

飽きないくらいの間隔で10cmほどの平たい魚が釣れます。

「俺はこれだけで満足してしまいそうだ。ねえちゃんはビキニだし」

「ああ、日本のしゃれた名前の釣堀より良く釣れる。しかもここは無料だし、ねえちゃんはビキニだ」

「日本のスレた魚たちとは違いルアーの選り好みはしないな、

100円のスプーンでも釣れるぞ。しかもねえちゃんはビキニだ」

「ねえちゃんはビキニだが、オバチャンもビキニだ」

「ウン、太ったオバチャンもビキニだし、太ったオジちゃんはトップレスだ」

「太ったオジちゃんのビキニは見たくない」

「痩せたオジちゃんならイイのか?」


                   bana05.jpg
画像、写真の修正、合成、修復など、写真を自自在に加工する事が出来ます。目をパッチリ二重に、肌をきめ細やかに、体型をスマートにシミ、シワを除去して若々しく、写真の修正、合成の事ならお任せ下さい。

 

やがて時間が来て私達はクルーザーに乗り込みました。

釣り道具などは全て船の常備品ですから気楽なもんです。

我々は自分の釣り道具を持って、場所を選定し、

ターゲットを絞る本格的なトローリングをする気はまったく無く、

観光の延長線上で「何か大きな魚が釣れればよいなあ~」位の考えであります。

ですので、この章の題は正確には「南海のブルーマーリン・・・

だったらいいなあ~出来れば4mを超せばなおいいなあ~」です。

乗組員は私達二人と太っちょで190cmを越すであろう巨漢のキャプテンと

まだ10代で私達の世話をしてくれるボーイの4人です。

我々は、外洋に出るにはやや不安が残る大きさのクルーザーですが喜び勇んで出港しました。

私の英語能力は並外れてすばらしいので、さっそくキャプテンに話しかけます。

「ハジメマチテ!ワタチ、ニポンノアングラーアルヨ!

キョウハ、イパイ、イパイ、オチャカナ、ツリタイアルヨロシ・・・デシタネ・・・デチタカ?」

「初めまして、今日は君達に大物を釣らせる為に俺はベストを尽くすぜ!」

(たぶん船長はそう言ったと思われます)

「オオ!ソデチュカ、ソデチュカ、ソレハ、タノモシデシタネ・・・・デチタカ?」

「しばらくこのリーフの中を走って外洋に出て、さらにしばらく走るとそこがポイントだ。

それまですることはないからビールでも飲んでゆっくりしていてくれ、OK?」

(キャプテンはそう言ったはずです)

「OK、OK、ワタチビールスキアルヨ、オチャケ、アレバドコデモハッピーデチタネ・・・・デチタカ?

・・・デチョウ?・・・デチュ?」
piyo01.jpg
(めずらしく卵をあたためているピヨ)


天気は最高、コバルトブルーの海とその下のさんご礁、海は完全に凪状態で風もなし、

クルーザーは気持ちの良い速度で走ります。

キャビンの中で飲む冷えたビールは旨いに決まっています。

ボーイのチャリー(完全に仮名です)が次々とバドワイザーの缶を出してくれて

我々は上機嫌でありました。

「ところで、オマエその英語らしきものは話すのをやめたほうがイイ。

過去、現在、未来がごっちゃ混ぜだし、疑問形かそうでないかすら分からん。

発音に至ってはこの世の終わりだ。日本の恥だし国際問題になるぞ」

「ナニを言う、ちゃんと通じているではないか、船長の笑い顔を見たろう?

国際親善に大きく貢献しているじゃないか」

「アレは笑っているのじゃなくて、笑われているのだ。

しかしまあしょうがない、話さないと上手くはならないからな。

でも大事な話は俺にさせろ、間違って船がキューバにでも行ったらかなわんからな。

オマエには本物のキングスイングリッシュのお手本を聞かせてやろう」

少し不満はありましたがBは大学時代成績優秀でしたし、

海外旅行も何回も経験しているので、ここはしぶしぶ任せる事にしました。

「良く聞いてろよ。ヘイ!チャーリー」

「yes、何だい?」

「チミは、なんちゃいでちゅか?がくせいちゃんでちゅか?」

「17歳で学生だよ、毎年シーズンになるとこの船でアルバイトしてるのさ、給料もいいしね」

「ちょうでちゅか、ちょうでちゅか、ちょれはヨイコでちゅねえ、うちのむちゅことおなじトシなのに、

チミはえらいなあ~」

汗だくで一生懸命チャリーと話をしているBを捨て置いて、

ビーフジャーキーをかじりながら冷えたバドワイザーをグイグイ飲み干しました。
tamago01.jpg
(向かって右から1歳、2歳、3歳のニワトリの卵)


青い海と青い空はどこまでも続いておりました。

やがて船はリーフを出て外洋へと進んで行くのですが、ここで海の表情は一変します。

あれほど静かだった海面は荒々しさを増し、青かった海はどす黒く変色してきました。

むかし何かの小説で読んだのですが海の色は7色有ると言うのです。

主人公は一面ミルク色の海をひたすら何日も進んで行ったそうです。

私は半信半疑で一度ミルク色の海を見てみたいもんだと思っていましたが、

この茶色っぽい黒っぽいなんとも表現しようのない不思議な色の海面を見ていると

何でもありそうな気になってきました。

船長に聞いてみようと思いましたが、彼はキャビンの上の二階になった所にある操舵室に居るので、

この揺れでは登っていく前に振り落とされそうだし

(二階に行くにはデッキに出てはしごを上らねばなりません)

なりより邪魔だろうと思い直し、おとなしくテーブルにしがみついていました。
HML01.jpg
(自作ルアー)


時間が増すごとに波は荒くなってゆきます。

もう既に座っている事も出来ず、私達は船に固定された長いすに下向きに寝そべり、

しっかりシートに抱き付いておりました。なんとも情けない恰好ですが、

そうでもしないとキャビンの中でアッチコッチ飛ばされてしまいます。

キャビンは私達が開けたビールの缶が音を立てて飛び交い派手な音を立てています。

でもそれを拾って片付ける事は到底不可能であると判断し、そのままにしておきました。

「なあ、俺達は死ぬのか?死んでしまうのか?どうなのだそこのところは?」

Bは青い顔をして私に尋ねます。二人は確実に船酔いをしておりました。

酒で酔った上に船にも酔い、青い顔も恐怖のせいか船酔いのせいかも分かりません。

「知らん!船長に聞け。我々に今出来る事はこの長椅子のシートを絶世の美女と思い込み、

しっかりと抱きついている事である。それ以外考えるな」

キャビンには丸い窓があって外の様子が垣間見えます。

別世界のような窓の外は真っ黒な雲と真っ白な波しぶきが交互に見えます。

そのうち窓の外は海一色になってしまいました。

「どういうことなんだ!窓には海水しか見えんぞ、窓と言うのは上か横に付いているもんだ。

横が下になったのか?この船はグラスボートなのか?」

おそらく船よりはるかに大きな波が立っているのでしょう。

その証拠に何分かすると今度は鉛色の空しか見えなくなりました。

さすがにのん気な私も不安になってきます。

チャーリーもどこに行ったか分からず、姿を見せません。

もしかしたら船長と一緒に波に飲まれたんじゃあ?

あんな高い所で、ほぼむき出しでキャビンよりもはるかに揺れは大きいであろう

操舵室に居たんだから落ちても不思議はないんじゃあ?
HML02.jpg
〔自作ルアー)


「おいBよ、キャプテンもチャーリーも居なくなった。もう俺達でナントカするしかない。

オマエは操船が出来るか?」

(緊張と恐怖のあまり自分が何を言っているのか判っていおりません)

「な!ナニを申しておる。いなか侍め!キャプテンがどうしたって?チャーリが何だって?

操船がどうしたと言うのじゃ申してみよ!」

私と同様Bも動揺を隠せません。船酔いと酒酔いと恐怖でパニック状態であります。

「船を波に向けて直角にしなければならん!横波を受けるとひっくり返されてしまうぞ。オマエやれ」

一見冷静そうな私の発言ですが、後で考えると明らかに映画とアニメの見すぎです。

しかもセリフはヒーロー風ですが人にやらそうとする所がいかにも小物であります。

「アホ!そんな事、出来る訳がないであろう。拙者は湖のボートさえ真っ直ぐには漕げん!」

上下左右すら判らずシートに必死でしがみ付く事しか出来ない我々は、

さらに追い討ちをかけられました。

今まで力強く動いていたエンジンが止まってしまったのです。

いきなりの静寂、出航してから数時間の間に聞き慣れていて、

時にはうるさいとさえ思っていた、いとおしいエンジンが黙ってしまいました。

聞こえるのは激しい波の音と風の音のみ、

それと同時に我々のつまらぬ会話も終突然わってしまいました。

今までも恐怖はありましたが、どこかで大丈夫と思う心が残っていて、

三割ぐらいは冗談でしゃべっていたのですが、

ここに来て本当に心配になりました。

この嵐と呼べるほどの状況の中で

エンジンを意識的に止めるキャプテンはおそらく皆無でありましょう。間違いなく事故です。

「オレは女房に手紙を書く事にした、空き瓶に入れて海に流すのだ。

いつか誰かが拾って届けてくれるだろう。そしてその時女房は声を上げて泣くのだ」

さすがはBです、彼の嫁が泣くかどうかは別にして、

この状況下でもまだ冗談が出るとは見上げた奴であります。私は少し気が楽になりました。

「大丈夫だよ、キャプテンがエンジンのテストをしているのさ、その内動くよ・・・・

動くといいなあ・・・・」

Bは黙ったままソロリソロリとシートの上を這い出し

(その恰好はまるで巨大なしゃくとり虫を連想させました)自分のバックに手を伸ばします。

そして中から手帳とボールペンを引っ張り出しなにやら神妙な顔で書き始めました。

「イ、イカン。奴は本気だ。」

Bは本気で嫁にラブレターを書いている模様です。

奴が壊れると私も壊れそうなので、

もうこれ以上余計な物は見ないようにして目を閉じる事にしました。

アクション映画はブラウン管のコチラ側で見るもので、けっして現実に起こってはいけません。

やがて良い事と悪い事が同時に起きます。

チャーリーがびしょぬれになってキャビンに突進してきて、

床にある扉を両手で目いっぱい持ち上げました。

中からは白い煙がシューシューモウモウと湧き上がり、

キャビン内は真っ白で何も見えません。キャビンの真下はエンジンルームだったのです。

エンジンが燃えている・・・少なくともチャーリーは無事だったので笑いかけたのですが、

その後の煙の噴出でBと私は笑顔が凍り付いてしまいました。

私の耳にはBがボソッとつぶやいた一言がこだまの様に頭の中を駆け巡っていました。

「終わったな・・・・」                    つづく



bana08.jpg
遺影制作、全国送料無料、ラミネート加工


スポンサーサイト
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。