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氷雨の中のチャンピオン(後編)

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(写真と本文は関係ないことが多いです)

キャンプ道具、釣り道具などみんなでフウフウ言いながら運びます。

「この次は車を乗り入れられるキャンプ場にしようぜ」

なにせみんな年ですのですぐにへばってしまいます。

「何を言っておるのだ車が近くまで行けるという事は、それだけ自然が無いということだ。

楽で豪華な生活がしたければキャンプなどしなくて良いのだ」

一番疲れて座り込んでいるBが言います。

確かにここの湖はキャンプ場と銘打っていますが、

人工物は小さなロッジとトイレと炊事場くらいであとは何も有りません。

通ってきた道も前編で書いた通りなので、かなり根性がないと来る気にはなれないでしょう。

そういえば来ている連中は家族連れは皆無、カップルも皆無、

どこかの大学の体育会系のグループが何やらかけ声をかけているのみです。

(それから5年位して再び訪れましたが道は完全舗装され、

曲がりくねった箇所はトンネルが出来、あっけなく着いてしまいました。

キャンプ客もカップルこそ居ませんでしたが小学生が林間学校に来ていて、和やかな雰囲気に包ま

れておりました。)

私たちは楽で豪華なキャンプが結構好きです。

小さな子供とか女性が気楽にキャンプに来れたらいい事だと思います。

我々も年ですし、家族などと出かける時はなるべく楽な所へ行きます。

ただ年に何回か不便なキャンプがしたくなるのです。

友人たちも同じみたいで、そんな時は釣り道具と酒以外は極力荷物は少なくし、

テントも登山用の小さなものにします。

テーブルなし、イスなし、大型のストーブ(バーナー)なし、タ-プなし、バーベキューコンロなし、

炭なし、着替えなし、クマのぬいぐるみなし、ランタンも全員で一個。

でもこれは場所を選ばねばなりません。

家族連れが多い設備の整ったオートキャンプ場は結構肩身の狭い思いをします。

周りは大型テントがズラリと並び、明々としたタ-プの下では豪華なバーベキューが始まり

子供達ははしゃぎまわります。

年々遠くへ行かないと不便なキャンプは出来なくなってきています。

何と不便な事でしょう。元々我々はキャンプ場と名のつく所ではキャンプはしなかったのです。

海や山に行って今日はここで泊ろうとテントを張り出したのものですが、

昨今では警察、消防、地元の方などに迷惑がかかる恐れがありますし、

防犯上の問題もありますので、なかなかそんな事も出来なくなりました

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(写真と本文は関係ないことが多いです)

さて、テントがブルーシートでない分、かろうじてキャンプをしていると分かる我々は、

夜のために焚き火用の大量の薪を積み上げ終わると、

そそくさと全員がそれぞれ釣りのポイントへ散っていきます。

私は湖用の長いフライロッドと、馬鹿でかいルアーが投げられる頑丈なルアーロッド、

それに近所の川でコイを釣るときに使う○州屋で買った、

たしか1950円だったかのリール付きの竿と、りんたろうミミズを担ぎ、

チャンピオンと共にお目当てのポイントに向かおうとしました。

するとAが

「お前なあ、いったいその恰好は何なのだ、

フライロッドとルアーロッドはまだいいとして、りんたろうミミズとはどういうことだ。

お前には節操がないのか」

「そんなモノはナイ!オレは湖中のサカナを全部釣り上げてしまうのである」

と大見得を切った時、フライリールからラインが引き出されるジージーという音。

さすがオレ、竿を振る前にもう釣ってしまったかと思いましたが、

そんな事はあるはずがなく、さっと振り返ると何とチャンプがラインを咥え、

足に巻きつけグルグルそこら辺を回っていました。

走る度にラインが体に巻きつきます。

「あッ!やめろヤメナサイ。そんなことしたら・・・」

私は叫びながら追いかけますがチャンプはパニックに陥ってなおさら逃げます。

Aも一緒に捕まえようとしますが、たっぷり食べ十分に睡眠をとったチャンプは元気満々走ります。

私は、はっと思いつき手に持っていたロッドに付いたリールから出るラインを掴みました。

それから20分間チャンプに巻き付いたラインを丁寧に解きほぐしている私の顔は

人生の不幸を一心に背負った老人のそれであった事でしょう。

「夕まづめの一番釣りに良い時間にチャンプとの良いコミュニケーションが出来たじゃないか」

とAは慰めともいやみとも取れる言葉を私にかけながら手伝ってくれました。


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多少時間をロスしましたが、やっとロッドを振り始めます。

まだ水生昆虫が羽化するには早い時期なのですが、

構わずドライフライを選びポイントと思われる場所にそっと置いてくるように努めます。

「あのう、もしもし、この時期にドライとはずいぶん思い切った事をしますねえ。

さすが、師匠ともなると違いますなあ」

横でAが慇懃無礼に語りかけます。

「うむ、よお~く見ておきなさい。オレのフライにかかれば湖の底のサカナも誘い出されるのだよ」

「ところでその不恰好な微妙にメイフライに似た物のマテリアル(素材)は何なのですか先生」

「これはリュウノスケとヒヨである」

「・・・・」

5分くらい沈黙が続いた後Aが真顔で

「ソレ、どこで売っているんだ?」

「どこにも売っていないよ、自分で採ってくるんだ。

中国の、パンダでも近づけない山奥に幻の・・・・」

「はい、はい。嘘だと言う事がよ~く分かった」
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(写真と本文は関係ないことが多いです)

バカな話をしている間に時間は過ぎ、みんなはテントに戻って来ました。

大急ぎで焚き木に火をつけ、宴会を始めます。

燃えて炭になった樫の木のカケラをいくつか焚き火から引っ張り出し、

横に大きな石を置いてその上にばかでかい網を乗せます。

みんなは各々持ってきた食材を焼き始めました。

我々のバーべキューは他の人達とは少し違います。

魚介類、かまぼこ、ちくわ、野菜などで、肉はほとんど有りません。

悲しい事に年をとったおじさん達の胃は脂っこい物を受け付けなくなっているのです。

先ほどの釣りで唯一Cだけが虹鱒を釣り上げたので、

Cは自慢話(たぶん自慢話だと思います)を始めましたが、

彼の話はあまりにもマニアックな為フライフィッシングをある程度知っている我々にも理解不能です。

「このレインボートラウトの虹の模様は住むところによって微妙に違うんだ。

おそらく#×○△*%&と*?%$のせいだと思うんだが・・・

(私に分かるのはここまでです)

「&%×#の!?*$*のハッチは#$&÷+!が○○した時で・・・」

(もはや手に負えません)

「ストマックポンプで出してみると、!○×#△?×÷%・・・」

(すでに神の領域です)

普段はあまりしゃべらない奴ですし、

こんな話を聞いてくれる人間はおそらく我々しかいないであろうと推測できるので、

この時はみんな真面目な顔で聞いている振りをしてやります。

ひとしきりしゃべり終わると満足をしたみたいなので、

焼き上がったそこそこの大きさのレインボートラウトをみんなでかたずけました。

だいたい飲むためにキャンプに来るのか、釣りをするために来るのか分からない連中ですので、

キャンプ道具より酒の方が重いんじゃないかと思えるぐらいの量を持ち込んで来ています。

「どうしてこんな所にビールを持って来るんだ。荷物の中で一番重いぞ」

「焚き火にはビールなんだよ」

「焚き火にはバーボンじゃないのか?少なくとも西部劇ではそうだぞ」

「オマエはローハイドとライフルマンで育ったからそんなことを言うんだ」

「いや、俺はコンバットと宇宙大作戦で育ったんだ。通信担当の黒人の女の人は良かった!」

「ところでペネロープと黒柳徹子はどうしてあんなに似ているんだろう?」

「ロボコンの実写版を見た事があるか?あれはさすがに笑えた」

「鉄人28号の実写版は見た事がある」
 
もはや最初の話はどうでも良く、建設的な話はまるで出てきません。

盛大な焚き火の周りで中年オヤジ達の何時果てるとも知れないバカ話を

楽しそうに聞いているのはチャンプだけであります。

私は犬のこういう所が好きです。

何を話しているのかはまったく分からないのに何やら楽しそうだ位は分かるのでしょう。

女房より真剣に楽しそうに私達の話に耳を傾けてくれます。

やがてさすがに辛抱強いチャンプもウトウトし始めた頃、

全員歯も磨かずテントの中に入っていくのでした。
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(写真と本文は関係ないことが多いです)


一人用のテントにチャンプを抱いて一緒に倒れこみ爆睡です。

早朝からハードなスケジュールだった為にすぐに寝入ってしまいました。

しかし真夜中頃、異様な物音に私は目を覚ませたのです。

「ボリ、ボリ、ガリ、ガリ」

何かを砕くようなかじる様な物音にぞっとしました。

この辺にはツキノワグマがいるのです。

野生のクマには以前一度出会ったことがあります。

クマザサの生い茂った斜面を渓流に向かって下っている時、

川原に小さく黒い塊が歩いていました。

私は足を止め息をひそめます。距離はかなりあるので心配はないと思いましたが、

やはり体は凍りつきます。

ゆっくり回れ右して車までたどり着いた私の背中は冷や汗でびっしょり濡れておりました。

そんな経験が有るもんですから即座にクマだと思ったのです。

でもテントの外の食料などは全てかたずけてきれいにしてあるし、

何をかじっているんでしょうか?しかもあまりにも音が小さく、あまりにも近い。

勇気を出してゆっくり音のする後ろの方を見ると・・・・

ぼんやりとテントに差し込む月明かりに小刻みに動くチャンプのお尻が目の前に見えました。

(起きてすぐ見る光景が犬の肛門と言うのはあまり頂けません)

昼間沢山の睡眠をとり、宴会中もウトウトしていた彼は夜中にすっかり目が覚め、

お腹がすいたのでしょう、

酒のつまみに置いてあった柿の種の大袋に頭を突っ込み、ボリボリ食べていたのでした。

私はほっと安心すると同時に体中の力が抜け、恐怖の裏返しでしょうか非常に可笑しくなり、

大笑いしてしまいました。柿の種をくっつけた顔をこちらに向け

へらへら笑うチャンプと二人の夜はこうして更けていったのでありました。

この後チャンプの運命はどうなったかと言うと、Cが欲しいと言い出し無事就職が決まったのです。

実は最初からチャンプを飼いたいと思っていたのですが、

釣りの事しか自己主張しない彼はなかなか言い出せなかった様なのです。

それで私がキャンプ場の管理人に売り込んでいた時も

「早く荷物を運ぼう」などと消極的な邪魔をしたのでした。

寡黙でやさしいCと気のいいチャンプは良い取り合わせでありましょう。

それから1年後、私はCの自宅を訪れたのですが、

チャンプはピオンと名を変え、ラブラドール位の大きさになっていました。

しかしレトリバーと似ているのは大きさと気の良さぐらいで、

姿はますます雑種の域を極めて、何の犬種が幾つ混じっているのか想像すら出来ず、

一言「ヘンテコ」としか形容出来ない風体でありました。

私を覚えているのかどうか分かりませでしたが、

顔を見るなりユサユサ尻尾を振り、頭を下げてへらへらノソノソ近寄ってきた彼は

拾った時と比べると、はるかにはるかに幸福そうでありました。 


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