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シロその後

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(杉の木に登り寝ます)

藤の木を追い出されたシロはその後どうなったかと言えば

、庭の端っこの小さな杉の木に新居を構えました。

他の連中を引き連れ、やはり一段づつ枝を登り、人間に捕まりそうにない所で夜を過ごすんです。

これでフン害もなくなり、めでたしめでたし、だったのですが、

今度は別の問題が発生しました。鶏の数が多くなると庭中穴だらけになり、

芝生などは絶滅寸前です。

藤の醜悪なクリスマスツリーの飾りも道行く人が足を止めていくぐらいで、

さすがの私も近所の噂が多少気になります。

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(シロにはなかなか近づけません)

そこでやむなく庭の半分を柵で区切り、彼女達を隔離する事にしました。

動物と人間の共存には多大な労力を必要とするもんだと大げさな事を考えながら、

半日がかりの労働です。しかしシロは自由な鶏だったんです。

柵を乗り越えられないと知ると、以前サマランチが脱走したようにブロック塀に飛び乗り、

自由にあちらこちら出歩くようになりました。

実はブロック塀のすぐ向こう側の家の主人は退職した元校長先生のお宅で、

彼が書斎のイスに座っていると、ちょうど目の前の窓の外がブロック塀の一番上の部分で、

塀を徘徊するシロと目が合ってしまうんです。その距離約1m。

「お宅のニワトリは良く散歩をしていますね、

こっちを見ながらスタスタ歩いて行きますよ」

と上品にやんわり言われました。

0044.jpg

この元校長先生はニワトリの如く喜怒哀楽の表情を出さない人で、

怒っているのか面白がっているのか分かりません。

「いやあ~ウチのはよく脱走するんですよ~

迷惑をおかけしていなければいいんですが・・・あっはは~」

「迷惑はかかってないんですが、仕事を中断してついニワトリを見てしまうもんでね」

(どっちなんだよう?迷惑なのか迷惑ではないのか、分からないよう。とりあえず笑って謝っておこう)

「そ、そうですかアハハ・・・スミマセン」

(と、とにかく何でもいいから話題を変えよう)

「ところでどういったお仕事をしているんですか?何時も机に向かわれているようですが?」

「僕はもともと国語の教師なんですけどね、退職したといってもいろいろやることがあるんですよ。

あなたはニワトリの研究でもしているんですか?この間も両脇に抱いて走っていましたが」

(ヤ、ヤバイ。話題を変えないつもりだ。しかも見られている。

しかし鶏を一羽づつ両脇に抱いて走る研究って何だ?本気で思っているのか?)

「イヤ、イヤ。研究なんてとんでもない。ただの趣味ですよ」

(・・・チガウ、チガウ。私は鶏を飼うのが趣味だと言ったつもりなんだヨウ。

ひょっとしたら鶏を抱いて走るのが趣味と思われたんじゃあ・・・)

「・・・そうですか・・・」

(や、や、やっぱり思っているぞ、この人は。絶対思ってるに違いない。

コッチは鶏とか、亀とか、ウサギとか表情を出さない奴らと長年付き合っているんだゾ。

ソッチが無表情でもそれくらい分かるんだい)

「・・・なかなか大変ですね。それではこれで」

「あっ、はい・・・ドウモ・・・」

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私は子供の頃から大学時代まで、先生と呼ばれる人とはあまり相性が合わず、

何時もすれ違いが多くてしかられてばかりでした。

思えばあの小学校の遠足の時も・・・・いや、いやもうやめましょう昔の話は・・・。

さて、シロですが、観察をしているとどうやら我が家の敷地以外には遠征していないみたいで、

ブロック塀を伝って金網の柵の向こうとこっちを、行ったり来たりしているだけのようでした。

この際元校長先生は置いとくとして、

隣近所に迷惑がかからないと判断した私は好きにさせておく事にしました。

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(リュウノスケ君)

一羽くらいなら穴を掘っても大した事はないし、

何より我が家が気に入って他所へ行かないのが嬉しいじゃあないですか。

しかし季節と共にまたもや問題が出てきました。

シロは雨の日も風の日も雪が降る日も、杉の木のねぐらを変えようとはしません。

他のニワトリ達は雨の日は小屋に入り、寒い夜は私たちが家の中に入れます。

シロの赤かったトサカは白く小さくなり、目はうつろ、明らかに具合が悪そうです。

早く暖かい家の中に保護しなくてはなりません。

体の上に白く雪が積もったある日、私はシロ捕獲大作戦を決行する事にしました。

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(合成写真です)

作戦名「シロよ永遠に」

集まったのは我が家の精鋭部隊、私、女房、大学生になった娘、高校生の息子です。

「え~。何時かはやらねばと思っていたこの作戦を、本日行動に移す時がやって来た。

皆はこの日の為に数々の厳しい訓練に耐え・・・」

「お父さんシロがあっちの隅に行ったよ。今がチャンス」

相変わらずチュッパチャプスをしゃぶりながら緊張感のない娘が言いました。

「隊長と言いなさい。それからシロではなくターゲットだ、気づかれるだろう・・・おい!ちょっと待て

作戦通りに・・・」

時すでに遅く、娘は走り出していました。

こうなればもう仕方が有りません、全員で総攻撃です。

パンくずを持って餌で釣ろうとしていた女房もパンを持ったまま走ります。

(うむ、やはりあいつが走ると迫力がある、夫婦喧嘩でも負けるはずだ。あっ!娘がコケた)

特攻隊長の息子は網を持って突進します。

彼はスポーツマンで何かにつけ体力に頼る所がありますので、やたらと網を振り回します。

勢いは認めますが、振り回せば良いと言う物では有りません。

私も雪で滑りながら走ります。しばらく雪の中を家族全員で息を切らせながら走りました。

私が前かがみで倒れながらシロを息子の方へ追い込んだ時、

上段から振り下ろした息子の網が遂にシロを捕らえました。

シロは大騒ぎでパニック状態ですが怪我はなさそうです。腹ばいに倒れた私に

「体長殿、ターゲットを確保いたしました!シロよ永遠に作戦成功で有ります」

娘よりはるかにノリの良い息子が嬉しそうに肩を上下させながら報告しました。

「よ、よくやった!お前の母上もお喜びだ。これで故郷に胸を張って帰れる・・・」

私は疲れていたので、顔に雪を張り付けて腹ばいになったまま、彼をねぎらいました。

立ち上がろうとした時、ふと嫌な予感がしたので、隣の家の窓を見ると、

薄暗い窓の中に手を後ろに組んだ元校長先生の無表情な顔がこちらを見ていました。

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(自作ハンドメイドルアー)



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